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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)260号 判決 1954年11月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人豊川忠進の上告理由第一点について。

原判決の字句には理解し難い点もないではないが、要するに本件預金は、元来上原恵理が訴外酒井喜三次から、同人の詐欺による被害者と目される者等を受益者として、同人の騙取金の疑ある十一万千三百円五十九銭の保管を信託され、保管の方法として自己名義を以てこれを株式会社第百四十七銀行沖縄支店に預け入れたものであり、この預金債権は上原個人の財産でないとの趣旨を認定したものであつて、原審挙示の証拠によれば右認定は是認される。されば(その払戻請求権者が右上原であるとした法律上の判断の当否はともかくとして)右預金が上原個人の財産ではないが故に上原個人に対する債権のためになされた本件転付命令は無効であるとした原審終局の判断は結局正当であつて(後記説示参照)論旨は理由なきに帰する。そして被上告銀行は右の預金を適法有効に那覇供託局に供託したものと認められるから、右の預金債権についての真実の権利者は供託物の交付を請求する権利を取得する訳であるが、右の預金債権は上述のようにいわゆる信託財産であつて上原個人の財産には属しないのであるから、供託所に対する供託物還付請求権もまた上原個人の財産に属しないこと明らかである。従つて上告人主張のような上原個人に対する債権に基いて右供託物還付請求権につきなされた転付命令は債権移転の効力を生じないものと言わなければならない。この点においても原判決は正当であつて、所論のような違法はない。

同第二点について。

原判決は本件預金債権が上原個人の財産ではなく、従つて供託金還付請求権もまた上原個人の財産でないとの趣旨の判定をなしているのであるから、本件転付命令の目的たる供託金還付請求権が上原個人の財産に属しないということを実体法上確定しているものと言うことができる。従つて、原判決には転付命令の目的たる債権の実体法上の確定を待たないで直ちに転付命令を無効と判定した違法があると主張する論旨は理由がない。

同第三点について。

論旨は、原判決には、本件転付命令の目的たる債権が上原恵理を債権者とするものであることを認めながら右債権転付の効力を否定した違法があるとして原判決を非難している。しかし、右預金債権、従つて供託金還付請求権は上原個人の財産ではないから、これに対する転付命令は無効であるとした原判決の相当であることは、上に述べたとおりである。論旨はこれと異なる見解に立つ主張に外ならないから、採用することができない。

同第四点について。

論旨は、本件転付命令の目的たる債権について上原が債権者でないならば、何びとが債権者であるかを指適すべきであると主張する。しかし本件転付命令が効力を生じないものであると判定するためには、本件預金債権が上原個人の財産でないということを確定すれば事足り、積極的に何びとがその権利者であるかを判示しなかつたからとて所論のように理由不備の違法あるということはできない。論旨は理由がない。

以上の理由によつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見を以て、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎)

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